フィクション・コース 高等科カリキュラム
フィクション・コース第29期高等科は、現在第29期初等科生を対象に選考受付を行っており、定員に達しなかった場合は2026年9月1日(火)15:00より一般受付を行います。
フィクション・コース第29期高等科 2025年9月29日(火)開講!
演出・脚本分野:高橋洋(脚本家・映画監督)、西山洋市(映画監督)
10分短編映画制作担当:高橋洋、西山洋市、宇治田隆史(脚本家)、冨永昌敬(映画監督)
コラボレーション実習担当:西山洋市
技術講師:山田達也(撮影)、臼井勝(録音)
*都合により講師や講義に変更の可能性がございます。
■初等科体験から高等科体験へ
初等科体験とはいったい何だったのか? 映画に対する知見の拡大、他では経験できない実践の積み重ね、仲間との出会い、または疲労、困ぱい、すり切れ、落胆、あるいは自分自身の可能性と不可能性の発見……。講師陣の目から見ると、明確に何かをつかんだ人やつかみかけている人よりも、つかみかけているけれどつかみかけていること自体に気づいていない人の方が圧倒的に多いように思われます。つまり、自分の気づきを意識化・言語化・身体化できていないということです。そこで高等科では、その気づきに意識化・言語化・身体化の機会が訪れるよう、初等科とは内実の異なるカリキュラムを用意しました。「10分短編実習」「コラボレーション実習」を経て「修了制作」に至る高等科の体験が常に受講生に問うのは、その気づきをいかに意識=血肉=思想=実践に鍛え上げるかです。
■脚本コースとのコラボ「10分短編映画制作」
脚本コース第14期高等科後期生が書いたシナリオを映画化する実習です。単に脚本コースからシナリオを提供してもらうのではなく、脚本を執筆した脚本コース生とフィクション・コース生とが、両コースの講師も交えて本直しを行い、撮影稿に仕上げていく、脚本コースとのコラボレーション講義です。制作は2班に分かれて行います。監督はじめスタッフはフィクション・コース受講生が受け持ちます。脚本コース生も含めた、新たな仲間づくりをして下さい。
■“プロとの映画作り”「コラボレーション実習」
映画作りにおいて何をどれだけ経験したか、その「量」の差が、いわゆるプロとアマを分かちます。そのことを嫌というほど思い知るのは、プロと同じ現場に立ったときのプロの動きが、アマであるあなたとはまったく違うことを目の当たりにしたときです。大事なのは、このプロと「同じ現場」に立つことで、「量」とは何かを具体的に問うという体験です。「コラボレーション実習」では、プロである講師陣とともに25分程度の短編映画を企画し、撮影し、仕上げます。受講生のなかからも監督が選ばれ、受講生全員が講師陣(当然ながら技術講師もプロの現場スタッフとして参加する)と「同じ現場」で、コラボしながら映画作りを行います。しかし、「量」が常に勝利するわけではありません。「量」に伴うべきは「質」だし、「質」はときとして「量」の多寡と無関係に、つまりプロとアマの差を超えて、きっとあなたを動かします。その「動き」が、あなたを「修了制作」での「動き」へと導きます。
■体験を血肉化する「修了制作」
「10分短編映画制作」「コラボレーション実習」を経て血肉化した映画力が最終的に試される場が「修了制作」です。まずは一人一人が30分の短編シナリオを企画し、完成させます。完成したシナリオは選考にかけられ、選抜されたシナリオを受講生だけで制作します。制作費は学校からの予算およそ60万円です。
講師からのメッセージ
「自分の脳みその外側に出て考える」
劇作家のブレヒトはナチス支配下の1934年に次のような文章を匿名で(匿名にするしかなかったのだ)発表している。「ものを書く人間は、強い者に屈服すべきではない、弱い者をだますべきではない。もちろん強い者に屈服しないのはたいへん難しい、弱い者をだますのはおおいに得になる。持てる者の機嫌を損じるのは、持つのをあきらめることを意味する。力を持った人々の間での栄誉を拒むのは、しばしば栄誉そのものを拒むことになる。これには勇気がいる」「迫害を受けた人々の多くは、自分の誤りを認める能力をなくしている。一番いけないのは迫害だと思い込んでいる。迫害者は悪人だから迫害するのだ、迫害を受けた自分たちは、善良だからこそ迫害されたのだと考えている。しかし、善良な者が負けたのは、その善良さのためではなく、その弱さのためだ。だが、これを言うのにも勇気がいる」。ブレヒトはここで、全体主義下での正義や勇気や誠実さについて語っているのではない。物事について語る時は“深く抉れ”と言っているのだ。ブレヒトの考え方は戦後に至っても一貫している。「今日の世界は、それをひとつの変化する世界として記述する場合にのみ、今日の人間にも記述できる」(いずれの引用も、ブレヒト『今日の世界は演劇によって再現できるか』所収)。この考え方は我々の演出についても大いに応用され得る。我々は俳優を一つの意味に押し込めるのではなく、絶えず変化し続けるものとして捉えることを目指している(ニコラス・レイの『ラスティ・メン』を見よ)。
近年、僕は受講生たちを見ながら、彼らは現代の映画について指針となる理念を渇望しているのではないか?と感じている。講師陣は、個々の作品の講評を通じて、実は表現を裏打ちする理念について語っているのだが、それはややもすると、ケースバイケースの技術論として受け止められ、消費されて、そこに通底する理念が見えにくくなっている。だが、その一方で、受講生たちは講師陣が語る言葉の根源にあるこの理念こそもっと知りたいのではないか?
理念とは僕なりの言葉で言えば、「自分の脳みその外側に出て考える」ということなのである。すでにナチス時代において、ブレヒトは立ち向かうべき相手はゲシュタポやSS(親衛隊)ではなく個々人の内面の中にいると示唆していた。今日においては、それはより深く、意識にすら浮上しないレベルで脳内に食い込んでいる。人々は困難な現実に直面すると、たちまち脳内の回路を閉じて、既存の引き出し(脳内イメージ)だけで処理する道を選んでしまう。様々なことに疑いを抱くくせに、「閉じる」という選択肢だけは疑っていない。だが、今日必要なのは“深く抉る”ことなのだ。僕は高等科では、このような理念=価値観を繰り返し言葉にして受講生に伝えたいと思う。従うべきイデオロギーとしてではなく、現代の映画を発見する契機となるために。
ーーーーーーー高橋洋
「初等科での映画作りをダイナミックに更新、進化させるために、いま考えるべきこと」
シナリオで描かれるもの、現場での演出によって描かれること、何を書き、何を演出するか……その考えや考え方自体はどこからどのように出てくるのか。つまり何事かを創作する上での枠組みとなる大前提をみなさんは考えたことはあるだろうか?……その前提となる考え方や創作に向かう態度といったものが、みなさんが作り出すものをすでに決定してしまっている、と感じたことはないだろうか?
あなたの物語は題材だけで決定されるのではなく、その語り方と同時に見いだされる。しかも、その語り方(形式)によって描ける内容は決まってしまう。形式によって考え方が規定されてしまうからだ。
大きい枠組みで言えば、例えばあなたがロマン主義的な視点をとるか、自然主義リアリズムの視点で描くのかによって描かれる内容はがらりと変わる。大雑把にまとめると、ロマン主義とは一つの理念(あるいはイメージ)によって作品世界を主観的にコントロールしようとすること。自然主義リアリズムとは主観を排して客観的に世界を(題材を)捉え、そこから自然に生成されるものを現実的に描くこと。十分な知識も経験もないものがロマン主義的な態度だけで臨むとそれこそ「自分がやりたいことをやりたいようにやっただけ」の独りよがりで幼稚な印象の作品になりがちだ。一方、自然主義リアリズム的に言うなら、シナリオは「設計図」ではなく、一つの「仮説」と見るべきで、そこではイメージと現実の整合性が試され、うまく(というのは「創造的に」という意味でだが)折り合いがつかなければその仮説は取り下げられ、新しい仮説が立てられることになる。仮説は崩して、さらに新しく強くするためにある。(演出もまたシナリオという仮説を検証するための実験である)。その土台があって初めてあなた独自のロマン主義が無理のないかたちで見出されることになるのだが、大事なのはあなたの主観(ロマン)からくる先入観をできるだけ取り除いて、題材をまずはフラットに描いてみることだ。そのベースの上に的確に抑揚を付け、メリハリを付けて行けばあなたの物語(ロマン)が生まれる。この考え方は演技リハーサルにおける「イタリア式本読み」の考え方と実は同じだ。そこには映画作りの基本原理に関わる何かがある。
高等科では、このように映画作りに対する考え方自体に意識的になって、それを更新するところから、あなた独自の映画と物語を模索してもらいたい。
ーーーーーーー西山洋市
【短編をつくる1】
班分けをして、それぞれ一人1本ずつ10分程度の短編を作ります。まずは高等科での肩慣らしですが、初等科からの顔馴染みのメンバーも、各人が高等科に向けた目標や希望を持っています。仲間意識を更新しましょう。
【10分短編映画制作(脚本コースとのコラボレーション)】
脚本コース第14期高等科後期受講生が書いたシナリオをフィクション・コース第28期高等科受講生が制作する、脚本コースとのコラボレーション講義です。2班に分かれて、脚本コース、フィクション・コースの講師と受講生たちが参加する本直し、フィクション・コース講師の立ち会いで行う模擬撮影、受講生たちだけで行う撮影、ポスプロを経て作品を完成させます。
【コラボレーション実習】
講師とともに25分程度の短編映画のシナリオを開発し、撮影し、仕上げを行います。担当講師は万田邦敏(映画監督)です。
コラボレーション実習の目標は大きく分けて2つです。
1.講師(プロ)がどのようにシナリオを構想するのかを間近に見る
受講生は、コラボで制作する映画のシナリオを担当講師と共に企画、執筆します。通常の企画講評・シナリオ講評とは違い、講師も自分の作品としてシナリオ作りに参加していきます。受講生は、講師が何を考え、何を拠り所とし、何を狙っているのか、講師のシナリオ作りの現場を共作者として体験します。シナリオの開発期間は約2ヶ月です。
2.講師(プロ)の演出技術・撮照録技術に間近に触れる
監督は講師と受講生(代表者)が務め、またプロである撮影照明講師、録音講師も参加して撮影・仕上げを行います。撮影前に、技術パートは実践的な技術講義を行います。プロと共に行う映画作りは、受講生仲閒だけでの映画作りとはまったく別と言っていいほどの体験です。彼らの技術を同じスタッフ仲間として間近に触れることで、受講生の意識と技術は確実にレベルアップします。
撮影期間は2日間、ポスプロ 期間は2ヶ月程度です。
◇準備(2月〜4月)
企画の立ち上げからシナリオづくり、撮影に向けた準備、ロケハン、キャスティング、など多岐にわたる課題・問題点を全員で共有し、各部ごとの準備を進めます。
◇各部講義・テスト撮影(4月)
撮影に向けて、撮影部・照明部・録音部・制作部はレクチャーを受け、撮影本番に向けてのテスト撮影を行います。
◇リハーサル(4月)
撮影稿をもとに、芝居を作り込んでいく過程を受講生全員で体験します。
◇撮影(5月)
講師陣とともに撮影現場を体験します。初等科で行ったミニコラボ実習とは比較にならない、経験したもの曰く「これを通るか通らないかでは全く違う」現場体験が待っています。
◇編集(5月)
完成までの作業を自分たちで行います。スタッフを再編成し、全員で編集から仕上げまで取り組みます。
◇デジタル・グレーディング(6月)
映像の色彩補正作業は、作品の最終的なルックを決める大事な作業です。
◇音仕上げ作業(6〜7月)
編集同様、完成までの作業を録音講師の指導を受けて自分たちで行います。ポストプロダクション講義を経て、本格的な整音作業を体験します。「音で映画を豊かにする」ということはどういう事なのかを実際に機材を動かしながら体験して行きます。ファイナルダビングミックスには録音講師が立ち会います。
【短編をつくる2】
「10分短編映画制作」「コラボレーション実習」で得た経験を生かして、各人が10分程度の短編を制作します。班分けはしませんが、新たな意識で繋がった仲間たちとぜひ協力し合って下さい。
【修了制作】
受講生各人が、まずは修了制作作品となる24分から30分尺のシナリオの企画・開発を行います。その後、企画検討→シナリオ化→シナリオ検討→最終シナリオ(&シナリオ検討会)と続きます。これまでの高等科体験で得た経験を総動員して、最終シナリオを完成させます。最終シナリオと「短編をつくる2」での作品をもとに、2026年9月に修了制作を選考します(修了制作の本数は受講生の人数(つまり予算)によって変動します)。10月から制作を開始し、2027年10月ごろを完成の目処とします。完成尺は30分以内です。







