フィクション・コース第24期高等科 2021/10/28(木)開講!

担当講師:万田邦敏(映画監督)、池田千尋(映画監督・脚本家) 
技術講師:山田達也(撮影)、臼井勝(録音)

■初等科からさらに進んだ映画づくり

初等科で作ったものから各自の課題をまず明確にして、次にどのような映画を作れるようになりたいかという目標を立てて各自の課題に臨みます。
「10分短編」→「コラボレーション実習」→「修了制作・企画開発」と各タームの経験をフィードバックさせていきます。

■“プロとの映画作り”「コラボレーション実習」

インディペンデント映画の実情(低予算、限られた撮影日数)の中で、いかにして観客を振り向かせる映画を生み出すか?そのためのモデルケースとなる企画のあり方、脚本作りを、シナリオ・ライティングの訓練を兼ねて探求します。
監督は講師および受講生(代表者)が務め、技術面でも講師がつきます。この体験が修了制作に生かされます。

○第24期高等科コラボレーション実習(監督:万田邦敏)

■“あなたのデビュー作”を撮る「修了制作」

みなさんと同じ条件から出発した国内外のインディペンデント映画と競い合うことを射程においてあなたのデビュー作を作って下さい。
「10分短編」「コラボレーション実習」を通じて、今、どんな映画を作ったら面白いかを互いに問い、探求し、技術を磨きます。そこで培った演出力と開発された企画・シナリオが今後の映画作りのベースとなります。
シナリオとビデオの選考により監督が選抜され、学校の予算(45万円程度)で制作を行います。

講師からのメッセージ

万田邦敏(映画監督)
私が授業で行うのは、受講生のみなさんが作る10分短編作品と修了制作作品のシナリオ開発の手助け、10分短編作品の上映講評を通しての演出技術のアドバイス、コラボレーション作品の共同製作です。
「手助け」と「アドバイス」に関しては、幾分かは「ダメ出し」の気味を帯びることもありますが、原則的には「こんな考え方があるので、そのことについて考えて欲しい」というスタンスで臨むつもりです。映画は感性で作るものではなく、まずもって思想で作るものです。ここでいう思想とは、映画表現とはいったい何かという問いに対するその人なりの思索の積み重ねのことです。つまり、「考える」ということです。「ダメ出し」があるとすれば、それは「考えてね」と言っているのです。同じことですが、「言葉にしてね」と言っているのです。
「共同製作」に関しては、1本の短編映画を受講生のみなさんと文字通り共同で作るということです。ここでは、私の思想とみなさんの思想を実践に変換していく様々な局面を体験することになりますが、思想がそのまま丸ごと作品として表現されることはあり得ず、多くの思い違い、考えの甘さ、強いられる妥協、しかしときとして思わぬ飛躍を経験し、思想がさらに鍛えられます。
そうして鍛えられた思想を、今度はみなさん自身が映画表現として実体化する場が修了制作となります。
それから、これはとても重要な情報ですが、過去に高等科へ進んだ受講生たちの中には、高等科のカリキュラムを受講することで自分の進む道に目覚めた人がたくさんいます。初等科だけではつかみきれなかったことを、高等科でしっかりと実感し得たのだと思います。彼らは監督に限らず、技術スタッフやプロデューサーとして今も映画に関わり続けています。

池田千尋(映画監督)
今年から高等科では新たなカリキュラムに取り組むことになりました。私は10分短編作品と修了制作作品のシナリオ開発と完成までの手助けをすることになります。初等科を経て新たなスタート地点に立ったみなさんと共に何ができるのか、どんな化学変化が起こるのか。私自身も新たな思いで、多くを学び発見していくつもりです。
みなさんは初等科での映画制作を通じて、それぞれに自身の課題を自覚し、直面している最中と思います。向き合い切れなかったこと、見つけられなかったもの、講評で指摘されて引っ掛かったままの言葉。そう簡単に答えは出ないし、自分に足りないものを自覚し続けるのは苦しい。けれど、それこそがあなたを今後押し上げ、引っ張り続ける大きな力になります。
映画に向き合うことは、自分という人間に向き合うことです。自分が持つ思考、言葉、知識、それがどれだけ足りないのか、弱点は何か。思い知りながら、自分の映画とは何か探し続ける。思い知るためには、他者の助言や指摘が必要にもなります。
あなたの課題を大きく目の前に掲げ、映画を作り続ける。一人では難しいことも、誰かがいれば可能にできる。映画美学校はそんな場所だと思います。

F24kou_curriculum【10分短編(チームで撮る)ターム】

開講ガイダンスで自分の問題点・課題を認識したのち、10分短編に取り組みます。各自が企画提出後、企画検討の講義ののち、シナリオ化→シナリオアドバイスの講義を行います。その後、スタジオ他にて講師立ち会いのもと演出実習を行い、演出へのプランを検討したのち、チームに分かれて撮影を行い、完成作品の上映と講評を行います。

【コラボレーション実習ターム】 担当講師:万田邦敏

コラボレーション実習の目標は大きく分けて2つです。
1.短編映画の企画開発・シナリオ作りを通して、企画力とシナリオ力を身につける。受講生は、コラボで製作する映画のシナリオを、担当講師と共に企画、執筆し、ドラマの構成力を身につけます。シナリオの開発期間は約2ヶ月です。
2.監督は、担当講師および受講生(代表者)が務め、またプロである撮影、照明、録音の講師のもとで撮影を行います。プロのもとで、講師のみならず受講生も演出をすることで、10分短編でのチームで映画を作ることの、よりレベルアップした映画作りを体験します。ここで培ったクオリティの感覚と技術力が、修了制作の現場でも生かされます。撮影期間は4日間程度を想定、ポスプロ期間は2ヶ月程度です。

<担当講師より>
コラボのシナリオ作成では、講師の思想に受講生みなさんの思想をぶつけ、互いの思想を鍛え直すことによってより強度のあるシナリオの完成を目指すことになろうと思います。具体的に言えば、まずは講師がお題を出し、受講生の皆さんがそのお題を膨らませ、再び講師が参加して、講師と共にシナリオを仕上げていくということになります。シナリオは、芝居を考えながら書かなければなりません。ここで言う芝居とは実際的な演技のことではなく、アクションとリアクション、関係性の変化、ドラマ、つまりは生身の身体と感情のことです。芝居は、映画のフィクションとリアルを支える重要な要素です。芝居についての思索は、シナリオを作成しているあいだじゅう、ずっと問題になるだろうと思います。そしてそれは、撮影の現場でも問題になることです。芝居を成立させるために必要なものは何か。どのパートのスタッフも、結局はそれに向かって思考し、準備し、実行します。演出は、私と受講生の代表者が分担して務めます。シナリオ作りと同様に、そこでも互いの思想がコラボレーションします。撮影は、準備も含めてそれなりにハードです。しかしそれは、意味のないハードワークではありません。ハードを通過した後には経験値が残ります。その経験値は、みなさんが修了制作を作る現場で活かされるし、その後のみなさんの映画との関わりにおいて活かされ続けるはずのものです。(万田邦敏)

◇準備(2月〜4月)
準備段階における課題・問題点を全員で共有し、各部ごとの準備を進めます。また、実際のロケ地探しなども進めていきます。
◇機材の使い方・テスト撮影(4月)
コラボレーション実習の撮影に向けて、撮影部・照明部・録音部はあらためて機材についてレクチャーを行い、撮影本番に向けてのテスト撮影を行います。
◇リハーサル(4月)
実際に撮影で使用するシナリオをもとに、芝居を作り込んでいく過程を受講生全員で体験します。
◇撮影(4月末〜5月上旬予定)
担当講師とともに、実際の演出、撮影を体験します。初等科で行ったミニコラボとは比較にならない、経験したもの曰く「これを通るか通らないかでは全く違う」現場体験が待っています。
◇コラボレーション編集(5月)
完成までの作業を自分たちで行います。スタッフを再編成し、全員で編集から仕上げまで取り組みます。
◇仕上げ作業(5〜6月)
編集同様、完成までの音仕上げ作業を自分たちで行います。「DavinciResolveサウンド講義」を経て、本格的な整音作業を体験します。「音で映画を豊かにする」ということはどういう事なのかを実際に機材を動かしながら体験していきます。また、映像の色彩補正作業もこの期間に行います。

【修了制作ターム】
修了制作に向けた24分から30分尺のシナリオの企画・開発を行います。24分から30分尺である理由は、この尺が、映画を見るものを納得させるドラマを描くことのできる最低尺であることと、国内外の短編映画祭等にエントリーする際のひとつの基準となっているからです。企画検討ののち、シナリオ化→シナリオ検討→一部分の映像化(&上映と講評)→最終シナリオ(&シナリオ検討会)と、書き物・映像両面から検討を重ね、次にフィードバックしていきます。最終シナリオ、最終の演出課題をもとに、2022年9月に修了制作を選考します(修了制作の本数は受講生の人数(つまり予算)によって変動します)。作品は30分尺。2022年10月から制作を開始し、2023年4月ごろに完成を予定しています。

【映画表現論】
フィクション・コース初等科との合同講義で、映画表現論を行います。
講義回数:全4回、担当講師(五十音順):深田晃司(映画監督)、三宅唱(映画監督)、他2名