「演出ワークショップ」(2月から7月)/担当講師:大工原正樹

IMG_1471初等科の短編制作や修了制作をとおして、映画演出は固定化されたノウハウやテクニックとしてなかなか蓄積できるものではないということを、実感として分かり始めている人も多いと思います。

演出とは、シナリオを正確に読んで、その正確さを役者の演技と画面の連鎖に落とし込むことですが、シナリオが代われば、そのシナリオが要請するテーマによって演出のタッチも変わる。役者が代われば、その前に通用していたアプローチを一旦破棄してでも、その役者に合った演出方法を選択することになります。また、映画は役者固有の資質に大きく影響されて、その資質に映画が代表されることもある。そうした錯覚を呼び込む仕掛けもまた、演出のうちでしょう。

とはいえ、映画で展開されるドラマのリアリティは芝居が多くを保証することになります。では、リアリティをもたらす芝居とは何か?それは、先日の講義でカトリーヌ・ドヌーヴがいみじくも言っていたように強度だと思います。では、芝居の強度とはなにか?
自分が敬愛する監督や俳優が演出について述べたある言葉が心に響いて、映画演出の秘訣を教えてもらったような気になる経験は誰もがあるはず。しかし、実際、監督として現場に立ち、俳優やスタッフを前にすると、自分で書いたシナリオでさえ、コントロール不全に陥って絶望的な気分になることが度々あったのではないでしょうか。

そうなってしまう原因の多くは、シナリオを正しく読む技術がないことから来る混乱と、独自の映画世界を構築するための計画不足にあります。
正しいシナリオの読み方と、それを役者の演技に反映させる技術の習得は、訓練によってしか得られません。
高等科の演出ワークショップでは、受講生がシナリオワークショップで開発したシナリオをもとに、リハーサルと短編制作を通じてその訓練を行います。
また、映画演出は芝居の演出ばかりでなく、カメラ、照明、美術、音などの「演出」が融合したものであり、それらを組織し、計画することも監督の重要な仕事です。ただし、そのまとめる(ジャッジする)という作業はとても奥深い行為であり、作者が実際に生きる世界の把握の仕方や、映画的な知性と直結してきます。

これらについても、1950年代の映画の演出を分析することで、受講生とともに考えていきたいと思っています。

 

「シナリオ・ワークショップ」(3月から8月)/担当講師:万田邦敏

シナリオ・ワークショップでは全12回に渡って、修了制作に向けた24分から30分尺のシナリオの企画・開発を行います。24分から30分尺である理由は、この尺が、映画を見るものを納得させるドラマを描くことのできる最低尺であることと、国内外の短編映画祭等にエントリーする際のひとつの基準となっているからです。
 各種映画祭エントリー基準の例を挙げておきます。
・アシアナ国際映画祭:30分以内
・ シンガポール国際映画祭:30分以内  
・ タンペレ映画祭:30分以内  
・ サンフランシスコ国際短編映画祭:30分以内
・ オーバーハウゼン国際短編映画祭 35分以内  
・ クレルモンフェラン国際短編映画祭 40分以下  
・ ゆうばり国際ファンタスティック映画祭
  ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門:長さの規定無し
  インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門:40 分以内
・ 水戸短編映像祭コンペティション部門:50分以内
・ カンヌ映画祭:シネフォンダシヨン 60分以下  
・ニッポン・コネクション 規定なし  

enshutsu担当講師より
 自分が作りたい映画を、たんに自分の趣味や好みだけで作っても、他人からは相手にされません。他人が求めているのは作り手個人の趣味や好みの表現ではないからです。では、他人を巻き込むことができる作品の力とは何か。それはおそらく、趣味や好みや即席の作り物や人から借りてきたまねごとではない、作り手個人の生活史に深く根付いた世界観の表出であろうと思います。映画は、その世界観を表現するメディアです。そしてメディアには、そのメディアに即したリテラシーというものがあります。つまり、個人の世界観は映画と直結していません。メディアとしての映画は、さまざまな方法を用いて個人の世界観を映画とつなげ、その映画表現と出会った他人を動かすのです。画面、音響、物語、主人公、風景、ドラマ、編集、等々がその方法となるでしょう。そしてシナリオは、どんな方法を用いて個人の(書き手の)世界観を映画として表現するかの、最初の設計図となります。ですからシナリオを企画し、書くためにまず大事なのは、自分の世界観を鍛えることです。20代なら20代の、30代なら30代の、40代なら40代の、自分自身を真摯に見つめ直すこと。まずはそれが企画を考える出発点となります。企画は、やがておぼろげな形となって心に浮かんでくるでしょう。シナリオワークショップでは、その企画を拡げ、転がし、展開し、シナリオとするためのさまざまな思考と実践を繰り返します。
 ワークショップでは、初等科と同様、受講生個々人による企画・シナリオ開発をベースとしますが、グループによる共作にも対応して指導します。他人の世界観に触れることは、自身の世界観の思わぬ飛躍や変容を生み、自身の世界観をより強くするものです。
 一人の受講生が個人と共作の双方に関わることもOKです。


シナリオ・ワークショップのおおまかな流れは以下の通りです。

・課題1「10分シナリオ」の企画提出。
 いきなり修了制作のシナリオを考えるというと身構えて、長考状態に陥ってしまう人もいるでしょう。そこで、まずは肩ならしのつもりで10分のシナリオを書きます。その出発点となる企画を提出してもらいます。とはいえ、先にも書いたとおり企画とは書き手の世界観を反映したものです。自分の全存在が試されることに果敢に挑戦して下さい。

・シナリオワークショップ第1ターム(1〜4)
 提出された企画内容の検討、プロット作りを指導します。

・課題1「10分シナリオ」の提出。
 講師による選考を経て、選ばれたシナリオを映画化します。映画化することによって、シナリオをいわば逆照射して、あらためてシナリオについての思考を実践的に深めます。
 ※映画化する本数は受講生の人数(つまりは予算)によって変動します。
 ※脚本コース・アクターズ生のシナリオが選出された場合は、演出ワークショップ生から希望を募って監督を任せます。

・課題2「修了制作シナリオ」の企画提出。

・シナリオワークショップ第2ターム(5〜8)
 提出された企画内容の検討、プロット作りを指導します。

・課題2「修了制作シナリオ」第1稿提出。

・シナリオ・ワークショップ第3ターム(9〜12)
 提出された第1稿の検討、リライトの指導を行います。
 
・課題2「修了制作シナリオ」決定稿提出。
 決定稿及びプレゼン用ビデオの提出を受けて、修了制作の選考となります。

※脚本、アクターズ・コースから参加の受講生が、単独で優れたシナリオを書いた場合、監督はコラボレーション実習を修了している受講生から選ばれます。例えば、第15期高等科の修了制作『なんのすべもなく』は、脚本コース生のシナリオをフィクション・コース生が監督する形で選ばれました(脚本:加藤高浩、監督:若栗有吾)。フィクション・コース生単独の脚本・監督ではなく、脚本と監督を組み合わせる場合は、本人同士の意向を第一とします(選考に関する詳細は「修了制作実習」の欄を読んでください)。

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