受講期間:2019年6月26日(水)-2019年8月31日(土)

劇映画の第一の被写体は俳優であり、その演技です。それは劇映画の内容そのものと言ってもいいものであり、同時に、その内容を観客にスムーズに伝えるという重要な役割を担ったメディアでもある、すなわち映画言語と言われるものの中心を成すものなのです。 では、映画の俳優には何が可能で、何が求められているのでしょうか?  
この講座では、演出方法の異なるふたりの講師による本格的なリハーサルと撮影を通して、受講生それぞれの「映画の演技」の可能性をできる限り拡張してもらいたいと思います。

講師からのメッセージ

nishiyama_AICたとえば荒唐無稽な見せ場を持つフィクション映画にリアリティを与えるものがあるとすれば、それは異界としての作品世界の日常的リアルとはどういうものなのかを追求し構築する演技演出です。そのときベースになるのは現実に似てはいるけれども非なるもの、現実を映画的に美しく(カッコウよくといってもいいですが、一般的な美の基準とは異なるダークな美しさなども含めたものです)再構築したフィクションとしてのリアル、つまり花のあるリアルです。現実を現実のまま投げ出すのではなく、能うる限り美しく見えるように(あるいは聞こえるように)、なおかつ現実からかけはなれて遊離してしまわぬぎりぎりのところで再構築すること。また、それを映画製作の現実的な条件(限られたリハーサルなど)の中でできる限りスムーズに行えるようになること。そのためには、とにかく一旦はこの世の日常的リアルの極北に立ってみる必要があるのだと思います。その先にどのようなフィクションとしての花が見えてくるか。そのための練習を、本読みから撮影までの過程を通して行なってみたいと思います。
西山洋市(映画監督/『運命人間』『kasanegafuti』『瑠璃道花虹彩絵』 )

 

manda_AICフィクションを支える芝居、それが映画の演技です。最近多く見られる日常をなぞる芝居は、映画の演技ではありません。なぜなら、映画の登場人物は現実生活には存在しておらず、映画というフィクションの世界にのみ存在しているからです。あるいは、登場人物の演技が、映画のフィクションを成立させているからともいえます。しかし登場人物は、その映画世界の中では、リアルに生きているのです。このフィクション(映画)とリアル(現実)の中間地点に存すること、それが映画の役者に求められることだと思っています。
万田邦敏(映画監督/『接吻』『イヌミチ』『シンクロナイザー』)

 

カリキュラム

西山洋市編
○あなた独自のリアルな映画的演技、ひいてはあなた独自の人物を発見するために、「イタリア式本読み」と呼ばれる方法を援用して、映画の被写体としてのあなたのあり方を一緒に考え、追及してみたいと思います。独自性は未知のリアリティに繋がっていると考えます。
○「イタリア式本読み」では、あなたの頭の中にすでに存在する何かを一切参照しない、真似ないことが原則です。先入観を完全に排除したフラットな状態になるまでシナリオの解釈(による演技)は行わないようにします。
○フラットな状態での本読みを繰り返す中で見えてくるものはなにか? それは、いらない演技の飾りを剥ぎ取った本来のあなた自身の姿かもしれず、さらにそこにあなたが演じることが可能な日常的リアルの極北、ケの中のケともいうべき姿が見えてくるのかもしれません。
○あなたの日常的リアルの極北には、極北的な花がすでに存在するかもしれませんが(ケの極北が反転してハレとして輝き出すことを期待したいと思います)、次の段階として、リアルなうえに花のある演技を模索します。それが一時的なものではなく、あなたの芸のようなものになればいいですね。
○あなたの演技をカメラとマイクで記録し、後で見ながらあなたの「花とリアル」についてさらに考えます。創造的に考え続けること、そのためのきっかけを作ることが、このワークショップの目的の一つだと思ってください。

万田邦敏編

課題シナリオの芝居を、以下のポイントに重点的に留意しながら、実際に組み立てる。
組み立てた芝居を撮影し、編集する。
○フィクションを支え、フィクションを立ち上げる芝居の、ある種の「型」について考える。
○現実をなぞる芝居は、現実の何を(どこを)なぞっているのかを知る。
○感情の動きと身体の動きを、あたかも無意識のごとくに連動させる。
○カメラのフレームを意識する。同時に、フレームの外を意識する。

曜日
時間
講義内容・講師
6/2616:30〜22:00開講ガイダンス(万田邦敏・西山洋市)+概論(西山洋市)
7/316:30〜22:00西山洋市編1
7/1016:30〜22:00西山洋市編2
7/1716:30〜22:00西山洋市編3
7/2416:30〜22:00西山洋市編4
7/2816:30〜22:00西山洋市編5
8/716:30〜22:00万田邦敏編1
8/1416:30〜22:00万田邦敏編2
8/1816:30〜22:00万田邦敏編3
8/2116:30〜22:00万田邦敏編4
8/2516:30〜22:00万田邦敏編5
8/3118:00〜22:00完成作品上映&講評(万田邦敏・西山洋市)

※最終日(8/31)のみ土曜の開催となり、開始時間も異なりますのでご注意ください。
※講師の都合により講義日程や内容が変更する場合がございます。

講師

西山洋市(映画監督/『運命人間』『kasanegafuti』『瑠璃道花虹彩絵』)、万田邦敏(映画監督/『接吻』『イヌミチ』『シンクロナイザー』『波濤』)

募集要項

募集人員:12名
申込締切:6月12日(水)(定員になり次第締切)
教室:
映画美学校(渋谷)

【一般】81,000円+保険料4,000円(税込)
【映画美学校フィクション・コース/脚本コース/ドキュメンタリー・コース修了生】46,000円+保険料4,000円(税込)※アクターズ・コース修了生も割引となります。事務局まで別途ご相談ください。

申込方法:受講希望の方は、問い合わせフォームに必要事項を入力いただき、メッセージ本文に「映画演技ワークショップ受講申込書希望」とお書きください(希望コースはアクターズ・コースを選択してください)。こちらから受講申込書をお送りいたします。

※講義開始に関わらず、申込者の自己都合での解約による受講料の返金は原則お断りします。但し疾病等、本校がやむを得ないと認める事由については、ご相談に応じます。

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映画美学校
〒150-0044 東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS
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