2019年8月19日締切の「プロット・コンペティション2019」の応募総数は19本でした。

各選考者による選考結果・選評は以下となります。

<プロット・コンペティション2019 選考結果(選考者五十音順)>

【江守徹プロデューサー選出】
選出作品なし
(佳作あり。佳作は選評に記載)

【小林剛プロデューサー選出】
みやたにたかし『元暴5年生リレー選』(第6期高等科後期修了生)

【近藤慶一プロデューサー選出】
選出作品なし
(佳作あり。佳作は選評に記載)

 

ただし、すぐに実現可能なものではない、という条件付きでの選出です。
作品の作者は、これから選出プロデューサーと顔合わせを行い、具体化を目指して話を進めていきます。

 

各選考者による選評

江守徹プロデューサー
(IKエンタテインメント・プロデューサー)

昨年に続き選考者を拝命させて頂きました。
今年も力作粒揃いで、且つ応募者の生き方や人生模様や思いが濃密に選者に迫ってくる為、選考後はいつも極度の疲労に襲われます。
それはとても幸福で豊かな疲労感です。

誠に残念ながら今回は選出作品は有りませんでした。
全体的なスキルやプロットとしての確立レベルはむしろ昨年より向上しています。
今回の特徴としては『ジョーカー』の大ヒットに沸く今の映画映像業界を反映するかのようなダークな内容の作品が多かったように思います。
それぞれに確かな力作でしたが、昨年の弥重氏のプロットのように、
“この素材を昇華・進化させて脚本化・映像化を是非とも試みたい”
と自分自身が強く思える、心たなびく1本に出会えなかった。
加えて登場人物の心情や設定を説明し過ぎる作品が多いのも今年は気になりました。

さて、以下、選にはもれたが、確かな力量と可能性を感じたものを佳作として挙げます。

●山城春花『KATSUKING』
●みやたにたかし『元暴5年生リレー選』
●土谷洋平『ばらかぞく』
●中塚みなみ『他人と会う』
●梅村このみ『恋すてふ KOISUCYO』
●安永豊『ゆうばえ』
●篠塚智子『ワンダーガールズ』

最後に昨年も同様に書きましたが、本企画は今後の映画映像市況の先を鑑みるに大変意義深く重要なことだと思う。
継続的にこの新たな才能に光を当てる動きが続くことを改めて願う。


小林剛プロデューサー】
(角川大映スタジオ プロダクション事業部プロデューサー)

今回でプロット・コンペティションの選考をさせていただくのも4回目になりました。個人的に毎回意識しているのは、その作品が仮に映画として進んでいった場合に商業映画として面白くなり、観客を楽しませることが出来得るのかという観点です。作家性、芸術性はその観点の一部分であると私は考えます。そして社会性も。映画は総合芸術だと言われますが、私が身を置く世界では商業芸術という言葉がふさわしいように思います。少なくとも、私の選考に関しては“商業”であるということを強く意識して、その将来性含め判断させていただきました。今回の応募傾向は、比較的王道の物語、主人公が困難に立ち向かい、家族や仲間と共に何かをつかみ成長するというものが多かった点です。世の中が閉塞している分、フィクションには希望への希求が生まれてくるのでしょうか。様々なジャンルで、それぞれアイディアをこらしていて、レベルが高かったように思います。ただ、王道であることは、やはり類型的であることにもつながり、どうしてもどこかで見た展開、結末の印象をぬぐえないものもありました。その中で、『元暴5年生リレー選』は、元暴力団の人たちへの差別という、昨今のマイノリティー差別問題の中で、普段知ることのないマイノリティーの人々にスポットを当て、新鮮さがありました。物語バックグラウンドへの正確な知識に裏付けされたリアリティも十分あり、テーマの現代性、映画化への意義も感じられました。展開のご都合主義がやや鼻につきますが、希望を持って終わるラストは清々しく、読後感がとても良い。今年はこちらを推させていただきました。その他では、やはり王道のスポ根路線、『スクイズ・ガールズ』が女子野球と戦略家男子マネという取り合わせがうまく行っていて楽しく読みましたが、物語の尻すぼみ感が残念でした。『おとうさんのきろく』は、お父さんという偶像を自由研究するという発想が秀逸で、ブラックコメディ、風刺映画として面白くなる可能性を感じました。オチにもっとインパクトが欲しい気がします。『魅惑者』も、筆者の意図するものが手練れに展開しワクワクするのですが、性行為に替わるエロスへのビジュアル追求があると、もっとある層の観客へのアピールになるのではと思いました。偉そうに講評してきましたが、今回も皆さんの熱気を十分に感じさせていただき、大変刺激を受けました。有難うございました。定番文句ですが、次は映画の仕事の場所でお会いできることを楽しみしております。

【近藤慶一プロデューサー(シンエイ動画株式会社 第二制作部 プロデューサー)

佳作:山城春花「KATSUKING」

今回、この企画自体をお聞きした際に「なんて有意義な企画なのか」と感銘を受けました。
自分も映画を学校で学ぶ立場に身を置いていた者として、これほど素晴らしい企画はないと思い、それ故に、本気で勝負を挑んできているこの19本には真正面から向き合わなければと思い読ませて頂きました。
正直、全てが「商業映画の企画として」という点と向き合っているか首を傾げる作品もありましたが、力を込めて書かれたプロットなのは間違いないと思いました。

先述の通り、「商業映画に成り得る」という観点を省いて選考しておりませんので、大変心苦しいのですが該当作品はありませんでした。
これは僕個人の意識の問題もありますが、映画は実写であろうとアニメーションであろうと「他人に観てもらう」という事が一番大事だと思っております。その為、書かれる方は「何を魅せたいのか?」「何を伝えたいのか?」という事に一度立ち返ってください。
そしてこれは端的にまとめられる筈ですので、3行でまとめる訓練をしてください。

しかし、その中でも山城春花さんの「KATSUKING」は素晴らしかったです。
「名前を取り返す」という非常に分かり易い入り口から入り、吃音の主人公を通して描かれていく人物は誰もブレがなく、疑問符の浮かばない物語にもとても好感が持てました。
この作品に関しては1点、お金を払って見たいかどうか。という点を考慮し佳作と致しました。面白さは申し分ないのですが、この作品を売るイメージができませんでした。
ですが、今後お仕事をご一緒したいと思えたほど気持ち良い作品でした。

他に読ませるプロットとして、太田慶さんの「魅惑者」、篠塚智子さんの「ワンダーガールズ」、原田宗平さんの「生と死と」が手を止めずに読み進められた作品でした。
人物や物語にご都合な部分がありますが、描きたい意図などは読み手に伝わる作品でした。今後の作品に期待致します。
もう一本、土谷洋平さんの「ばらかぞく」については、企画の着眼点が良く「ちょっと観たいな」と思える梗概でした。しかし、主人公の造形は不明瞭であり、葛藤している点も見えず、それ故に後半は失速し書ききれていない印象です。
時代性のあった着眼点のみ評価致します。

以上になります。
ご応募頂いた皆さまの今後に期待しております!

 

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