第7期フィクション・コース高等科修了作品
2005年(58分)DV

監督・脚本:金子雅和
スタッフ:土屋圭 古謝甲奈 東哲哉 川口力 高田伸也

出演:小谷健仁 山田キヌヲ 松岡龍平 遠藤祐美 綾野剛

【物語】ある地方都市の寂れた寄席で夜な夜な奇妙な腹話術人形劇を演じる男がいる。男の名は文月。少女のような声で「すみれ」と名づけた人形の言葉をしゃべる。すみれとは、五年前に右腕だけを残し失踪した文月の妹の名だ。腹話術師のかたわら妹を探し続ける文月は、ある日偶然すみれの面影を強く感じさせる美しい女を見かける。その女を追い求めていくうちに文月は。暗い森の奥へと足を踏み入れてしまう。そこには、すみれが失踪して間もなく姿を消した幼馴染みの螢介がいて……。

【コメント】樹、水、廃墟、そこには人間と同様に精神があると思っている節がある。いや逆に、人間もそれらと等しく空っぽの空洞だと言いたいだけかも知れない。金子は今日珍しく仏陀的な男で、これは今どき挑戦的な信仰についての映画なのだ。(瀬々敬久)

【コメント】こだわり、選び抜かれた風景や空間に人物が配置され、これ以上はないという的確さでカメラはその様を切り取っていく。そこでは風景や空間が持っている歴史性は捨象され人物たちも極めて個的な動機に突き動かされて行きている。だから、この映画は精緻に作りこまれた箱庭のように美しく、万華鏡を覗きこんだ時のような眩暈を覚える。まるで、世界は、ただ美のために存在しているかのように錯覚させられるのだ。(井土紀州)

ひろしま映像展2007撮影賞受賞作品
第13回ハンブルグ日本映画祭上映作品