記憶のない生
第2期ドキュメンタリー・コース基礎科作品
2002年(7分)DVCAM
監督:後藤雅美 冨田信康 西晶子
【解説】高層団地の廊下に杖の音が響く。映画美学校ドキュメンタリー基礎科のインタビュー課題である『記憶のない生』は、面識のない人に取材するという条件のもと、三人のメンバーにより、子供、主婦、老人という三世代のドキュメンタリーとして企画され、高島平団地でロケされた。そこで買い物のビニール袋を下げた老人に偶然出会い、自宅に招かれたことが決定的だった。しかし、その取材に納得できなかった三人は、三日後に再度訪問したのだが、その時、92歳だという老人には彼女らの記憶がまったくなかったのである。その際のインタビューが、この作品の実質である。職業を問われた老人が教師だと答え、教えた科目が算数から、やがて数学へと変化する時間の残酷さが映し出される。やがて、亡き妻への記憶へと、インタビュアーの質問は向かう。わずか7分の小さな傑作である。