フィクション・コース第24期初等科前期は、オンライン講義での開講となります。オンラインだからといわゆる座学に甘んじることなく、映画美学校独自の実践中心の方針を貫いて、この状況下で“映画を学ぶ”“映画をつくる”とは何かを追求していきます。
映画が危機的状況にある今だからこそ、映画に何が出来るかをみなさんと共に探求していきたい。映画美学校はそのように考えています。開講にあたり、第24期初等科前期の講師を担当する大工原正樹さんにコメントをいただきました。

今はアイディアと意欲を溜める我慢の時なのか、それとも、この状況にこそ新しい表現の芽があると信じ模索すべきなのか、世に溢れるリモート映画を見るほどに、正直、分からなくなっています。

誕生から120年以上、映画は当たり前のこととして同じ空間にいる人物にカメラを向け続けてきたわけですから、それが出来ないのはとても困る。困るけれども、撮らずにはいられない意欲的な人も大勢いて、早速、さまざまな遠隔撮影・遠隔演出の方法を提示してくれているのが現在だと思います。

ただ、それらのアイディアに驚き感心しながら、それぞれ一つのパターンを観ればもう十分という気がしてしまうのも、出遅れた我々が抱える試練なのでしょう。

ある尊敬する監督が「リモート映画は、面白さを捨てたところにこそ真の可能性がある」という仮説を、実践方法とともに述べていて、これはかなり刺激的な文章でした。一見過激な主張ですが、「旧来の面白さの価値観を捨てないかぎり、リモート映画での新たな面白さは獲得できない」という、作り手と観客へのアジテーションでもあるのです。実践するには、同じ問題意識と相応の演出力が必要で簡単なことではないのですが、もしかすると、このような斬新な思考が生まれること自体が既に、コロナ禍が映画にもたらした変化なのかもしれません。

今期、映画美学校を受講する人は、まずは今の状況で撮れる短編を撮って考えるもよし、撮る前に悩んで立ち往生するもよし、いずれにしても「映画って何だろう?」というよく聞くお題目を、自分に嵌められた枷の問題として否応なく考え、体験せざるを得ない期になると思います。それを見る我々講師も含めて。

個人的には、リモート撮影という行為の正しさのみに安住しないバリエーションを見せてほしいと期待しているのですが、短編を撮る機会は前期だけでも3回あります。皆さんが撮った作品を前に、受講生と講師が、また受講生同士が、そんな話題でも議論を深め、また撮る。そのようにして互いに刺激し合えればいいなと思っています。

9月からの半期、時にはもどかしく不自由に感じることがあったとしても、そこで考えたことは必ず、コロナ後の映画を撮る時のアドバンテージになるはずです。

今年の映画美学校は、きっと学校スタート時と同じような予測不能の面白さがあります。千載一遇のチャンスと思って、ぜひ受講してください。

プロフィール

大工原正樹(Daikuhara Masaki)
1962年生まれ。大学の時に8ミリで自主映画を作り始める。その後、プロの現場で廣木隆一、鎮西尚一、石川欣、市川準らの助監督を務めた後、89年、映画『六本木隷嬢クラブ』でデビュー。以降の主な作品に『のぞき屋稼業 恥辱の盗撮』(96)、『同・夢犯遊戯』(96)、『風俗の穴場』(97)、「真・女神転生デビルサマナー」(TV・00)、「七瀬ふたたび」(TV・00)、『赤猫』(04)、『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』(10)、『坂本君は見た目だけが真面目』(14)、『ファンタスティック ライムズ!』(17)、『やす焦がし』(17)

 

フィクション・コース第24期初等科前期 9/9(水)開講!

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