IMG_6680 (1)小嶋貴子さん 鈴木万理さん(写真左から)
フィクション・コース第21期初等科受講生

映像制作の経験や深めたい分野も異なる2人に、ざっくばらんに受講を終えての感想をお話いただきました。監督志望でなくてもやっていく中で技術分野を深められる方もいます。実習や他の人の作品を手伝うことで、実践の機会を多く持つこともできるので、そういうことも会話の中から垣間見れるかと思います。

映画美学校に入ったきっかけ

ーーまずは映画美学校に入った経緯を教えてください。

鈴木:もともと商社で働いていて、事務の仕事をしてました。その時からいずれは映画業界で働きたいな、と思ってたのですが、自分には何ができるのか、何をしたらよいのかよくわからないというのがありました。でも仕事を続けるうちに、なんかもっと、自分はものづくりそのものに関わる方が好きなのかな、と思うようになって。同じ映画に関わる仕事でも配給とか宣伝ではなくて、何か現場でつくっていく仕事の方がやりたいんじゃないのかな、と考えるようになりました。それで、映画美学校があるというのを知って、割とあの、学費も安いと思って(笑)。ちょうど仕事も3年働いたくらいだったので、これをきっかけに辞めて入ってみようと。映画づくりについてまんべんなく勉強できるのが映画美学校なのかな、と思って、とりあえず1回やってみよう、という気持ちで来ました。

小嶋:私は、最初は観るのも好きだったんですけど、ビデオカメラが個人でも手に入るような値段になってきたのが大学生ぐらいだったので、それを持ち始めてから、作る方にいくようになって。それ以来、映像制作を続けていました。実は会社員をしながら似たような学校に通ったことがあるんですよ。でも、仕事が忙しすぎて、学校の授業に行けなかったり。授業が終わってもまだ働いているというような状況で、土日も仕事が入ったりして全然できなかったので。結婚して生活が落ち着いたので、それで時間ができたっていうのが大きかったですね。

技術分野の話、技術の習得について

ーー鈴木さんは音の技術関係に興味があると伺いました。

鈴木:そうですね。ずっと吹奏楽をやっていて、その関係からか昔から音に興味があって。自分が映画の中で何ができるんだろうって考えたときに、音だったら何かできることがあるのかもしれない、音で何かやってみたいというのがありました。

小嶋:でも、なんかめずらしいですよね。音から映画に入るっていうのは。もともと映画が好きで、そこに入れるとしたら、もしかしたら音の方かなっていう感じだったんですか。

鈴木:そうですね。効果音をつくる人をフォーリーアーティストっていうのですけど、テレビで特集されていたものを何年か前に観る機会があって、すごく興味がわいたっていうのもあります。試行錯誤しながら音を作っていくというのがすごく面白そうだと思って。

ーー学校に入って、初めて録音関係の機材などに触れられてどうでしたか。

鈴木:短編や修了制作でも他の人の作品に関わることが多かったので、録音のほうは初等科のレベルでは、結構、充実した技術が得られたと思います。(録音の)講義自体はあったんですけど、そこから実際の撮影現場で、自分で操作できるようになったのは、ミニコラボ実習の時がはじめてだったと思います。録音技師として修了生の方が入ってくださって、より実戦的に教えていただきました。そのときに割と自由にやらせてもらえたというか、やっていく中で、もっとこうしたほうがいいということがあればきちんと教えていただけるので、わからないなりにも自分で考えてやってみることができたのがよかったです。

小嶋:鈴木さんは、多分かなり実践を繰り返しているので、もう技術的には高いんじゃないかと思います。

鈴木:わからないですけど(笑)。あとは撮影とか照明は、わからない部分がまだたくさんあります。修了制作でも撮影を担当させてもらった作品もあったんですけど、カメラの操作を聞きながらやるという形になってしまって。もっともっと勉強したいです。

小嶋:ぶっちゃけあんまり技術系の授業は少なかったですかね(笑)。でもそれは当たり前でいいんですよ。実技については、やっぱり自分でやっていくことでしか覚えられないと思います。カメラの操作とか、三脚の立て方とかもやっていくうちに早くなっていくというか。だからその分、短編をたくさん作らせたりそういうことを入れてくださっているから、すごくいいなと思いました。 それがイコール技術の練習の場になるので。アシスタントの方もいるし、カメラのことに関してはいろいろ聞けるじゃないですか。そういうのも距離が近いから聞きやすいというか。編集のこととかも聞いたりできて、ミニコラボ実習の時はそれですごく助かりました。

鈴木:そうですね、あと同期の方にも詳しい方がいたりするので教えてもらったりとか。

小嶋:一眼とかで撮っている人もいたりするので、場合によっては同期の方のほうが詳しかったり。みんなよく情報を仕入れるから、何でも持ってるし。

一番印象に残っている講義

ーー一番印象に残っている講義は何ですか。

鈴木:私はミニコラボ実習かなあ。
小嶋:やっぱりミニコラボ実習と短編ですよね。

ーーどういったところが勉強になりましたか。

小嶋:色々あったんですけど、ただ単純に端からみているだけじゃダメだよな、と思いました。色んなことを判断してらっしゃると思うんですけど、それをいちいち聞くわけにもいかないし。後で聞いたとしても時間が立っているから。 やっぱり監督っていうのは現場でやっていることがすごいたくさんあって、それを全部把握しようとすると、これを1回見ただけじゃわからないなと思って。他の方も含めて、もっと色々見ないとダメなのかなと思いました。

鈴木:私は録音部だったのですが、企画、脚本から撮影、ポスプロと最後の音仕上げまで、ずっと関わらせていただいたのがすごいよかったな、と。実際関わらなくても、多分どうにかはなってたと思うんですけど、自分から積極的に作品づくりに関わっていくともっと楽しくなるというか。大変は大変なんですけど。

ーー短編課題の提出と講評もたくさんありました。

小嶋:そうですね。なんか、いつも怒られたなって。いや、まあ当然なんですけど、作る前にちゃんと考えないとだめだなって思いました。映画をつくるのに、確か西山さんかな?誰かが言っていたんですけど、「映画を撮るのに一番最 初にやるのはまずは考えることです。」と。ちゃんと考えてから撮らないといけないってその時に思って。

鈴木:やばい。

小嶋:だからやっぱり準備が大事。でもやっぱり準備の時間が足りなくてっていう。すごい後悔することの繰り返しです。でもそれに気がつけたっていうことは、そういう厳しいご指導があったからなのかなという風に思います。まだ身についていないんですけど。

ーー準備っていうのは、スケジュールとか脚本のことですか?

小嶋:脚本ですね。ちゃんと考えて書かないと、やっぱり。撮ってきたものを見ても、なんでここはこうなるのっていうそもそもの話のところから、結構言われるので。

鈴木:フレームの外の部分をしっかりつめないと、フレームの中の世界が現実的に見えてこないというか、説得力が足りなくて観客がついていけない、こう、何ていうんですかね。

小嶋:キャラクターの設定とか、背景とか。何でこの人こういう感じの流れになるの、とか、こういうセリフになるの、っていうところとかメインに指摘をされることですね。監督としてどういう風につくるのかっていうことをすごく見てくださったというか。技術的なところではなくて、中身についてのアドバイスが多かったので、それはすごくよかったですね。

ーー脚本執筆で大変だったことはありますか。

鈴木:そうですね。私、全然脚本が書けなくて。修了制作も脚本が書けなくて、もうプロットでもないような、断片的なイメージのようなものを持っていって、それをぶっつけ本番で、撮って繋げるという感じになってしまったので、さっきの西山さんの、ちゃんと考えるっていうのが、結局できていなかったように思います。脚本って本当に難しいなっていうのは、入って自分で書いてみるようになってから気がつきました。なんか物語をうまく発展させられないっていうか、とにかく全然できなかったですね。

小嶋:今考えると私が撮っていたのはイメージ映像みたいなもので、やっぱり脚本じゃなかったんですよね。この学校に入る直前に撮った映画があるんですけど、それが全然うまくできなくて、何がうまくできないのかな、と思ったらやっぱり脚本だっていうのを気が付いたんですね。だから入ったっていうのがあるんですけど。なので、脚本が大事だっていうのはわかっていたんですけど、どう書いていいんだかわからないっていうのを模索した1年でした。

ーーそれは書いたり、講評を聞く中で自分で発見していくしかないと。

小嶋:やっぱり、書いて人に見せなきゃだめだなっていうのをすごい思いました。修了制作の時も思っていたんですけど、いろいろな人に見せて、その脚本自体を叩かれないと、いいものになっていかない、人に訴えられるものになっていかないというか。自分だけで書いたとしても独りよがりでしかない、伝わるものにならない気がして。脚本の段階でいろいろな人に見せて、直すというのが大事なのかな、と思いました。本当にすばらしい先生方と仲間がいるので、そういう機会をもっと利用すればよかったなと今になって思います。

ーー修了制作はどうでしたか。

小嶋:鈴木さんのこの日焼けした腕を見てくださいよ。いかに過酷だったかっていうのを(笑)。

鈴木:(笑)。

小嶋:過酷というか、でも楽しかったですよ。人の作品に参加することもすごく楽しいなと気づきました。自分が参加した他の人の作品がすごく評価されたり、セレクションに選ばれたりしたらすごく嬉しいなと思います(笑)。いいものつくるって多分そういうことなのかな、と思います。個々に力を出し合うことで、全体的によくなる、よくしていくことができる。監督1人だけの力ではなくて、他の人の力も集まることで、映画ってよくなれるんじゃないかなと思います。そういうのってほかで、あんまりないんじゃないかなと思います。

映画美学校に入って変わったこと

ーー1年間講義を受けて変わったことはありますか。

小嶋:やっぱりすべてにおいて変わったんじゃないかなと思います。映画の見方とつくるものに対する姿勢っていうのがすごく変わった、叱られていく中でやっぱこれじゃダメなんだな、というのを教えてもらったし、本当に、いろいろ影響があるんじゃないかな、と。あと時間の使い方が、忙しくなると他のことがおろそかになるので、どういう風に時間を使うのかということを、会社員の時以上に考えるようになったと思います。前に映画を見ていた時っていうのは、その映画が言わんとしていることばっかり考えているような気がして、でもそうじゃなくて、その物語がどう語られるのかっていうところを見ることができるようになったというか。それを自分のものにしていくことはなかなかできないんですけど(笑)。

鈴木:私もそうですね、映画の見方、見せ方についてよく考えるようになりま した。あと、クレジットの部分を、今までも見てはいたんですけど、誰がスタッフとして関わっているのかというところも気になるようになってきたのがあります。でも、一番変わったのは生活リズムですね(笑)。いろいろ、タフになりました。

これからのこと

ーーこれからというか、どうしていこうかというのはありますか。

鈴木:高等科に行こうかな、とは思っていて。もっと音のことも、専門的に勉強したいというのがあって。あとは現場での経験をたくさん積みたいと思っています。今も同期の方の作品を手伝ったりはしてるんですけど、プロの現場に入っていけるような、確かな技術力や知識をつけていきたいな、と思っています。

小嶋:どうしようかな、と。まだちょっとわからないですね。でもつくり続けたいし、勉強も続けていきたいと思っています。

(インタビュー・構成/松山にき)