趣旨書
「映像の時代」といわれる20世紀は、映画、テレビ、ビデオなど多くの映像作品を生み、豊かな文化を育んできました。今日の私たちは、意識するか否かを問わず、大量の映像に囲まれて暮らしています。
このような状況のもとで、与えられた映像をただ享受するばかりでなく、自らが表現者となって作品を制作し、世に問いかけていくことを望む人々が、社会の各層に増えています。企業や組織に属することのないこういった創作活動は、自主制作といわれ、私たちを取りまく映像環境を活性化させる行為として、映画史的にも重要な意味をもってまいりました。
今日高い評価を受ける世界の映画作家の多くが、自主的な創作活動を出発点として自らの方法論を切り開いてきたことはよく知られています。しかしながら、この様な創作を目指す人々にとって、映像表現の基礎と実際を学び、自らの表現方法を発見するための場を確保することは、極めて困難なことでした。誰もが、何歳からでも、それまでの経験を生かしながら、本格的な映像の表現者としての道を歩むことができる。そういった環境の整備が、今求められているのではないでしょうか。
私どもはこのような現状を踏まえ、1997年に映画技術美学講座を開講いたしました。そして、翌1998年より「映画美学校」という任意団体を組織して、広く市民を対象に、映画やビデオなどの映像制作についての基礎的な知識を教授し、すぐれた作品には国内・国外での発表の機会を設けてまいりました。青年層から熟年層まで、多様な社会的キャリアをもつ人々が、映像表現の理論と技術をしっかりと学び、質の高い作品を創造していく。そういった環境を用意することは、さらなる技術の開発とそれに伴う映像表現の進化が予想される21世紀の映像文化を豊かなものにしていくと考えます。
以上の理念にもとづき、映画・映像の分野における自主的な創作活動を、教育を通じてサポートする団体として、私どもは特定非営利活動法人を設立いたします。
1999年11月
設立者代表
堀越謙三 松本正道